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【わかりやすく解説】与信と与信管理とは?|限度額の考え方や管理法、その重要性を解説

【わかりやすく解説】与信と与信管理とは?|限度額の考え方や管理法、その重要性を解説

「企業間取引では請求書払いが採用されているケースが多く、納品と代金支払いは同時期に行われません。つまり、「先に商品を提供して、後からそれに対して代金を払う」という関係で進行します。

請求書払いとは納品完了後、請求書に記載されている指定期日までにお金を振り込むという形態で、会社同士の信頼によって成り立っています。そこで重要になるのが与信です。

この記事では、与信とはどのようなものなのか、与信管理の重要性と与信管理の方法、与信限度額の考え方などを解説します。

目次

与信とは

与信とは、会社が取引実績のある取引会社ごとに信用を供与すること

与信とは、会社が取引実績のある取引会社ごとに信用を供与することです。

企業間取引では、あらかじめ締め日を設定して、その締め日までに発生した代金を一括して請求する請求書払いがほとんどの場合採用されています。ただし、この仕組みの場合、納品と代金支払いが同じタイミングではなく、代金を回収できないリスクを伴います。そのため、信頼関係の成り立つ企業間でしか採用できません。この信用を取引先へ供与することを与信と呼んでいます。

頻繁に取り引きする取引先だと、取り引きごとに代金を請求していては手間がかかります。「取引先の支払業務が煩雑になる」、「手数料負担も大きくなる」ので効率的ではありません。与信があれば請求業務・支払業務をまとめられるので、両者にとってプラスといえます。

仮に与信限度額が「100万円」に設定されている場合には、今月の売り上げが「60万円」、先月の残債が「40万円」の状態だとそれ以上受注できないといったように、基準を明確に示すことが求められます。

与信管理の重要性

会社の業績に大きな影響を与えることもある与信管理のイメージ

与信は一度設定すれば終わりというものではありません。取引頻度や取引先の業績などを踏まえながら最低でも1年に1度は見直していく必要があります。それが与信管理です。

与信管理を適正に行っていなかった場合、売掛金を回収できず、会社の業績に大きな影響を与えかねません。与信管理を行っていない企業など存在しないほど、重要なものです。与信管理の重要性をさらに詳しく掘り下げると、以下の3つが挙げられます。

  • 連鎖倒産防止
  • 資金繰り対策
  • 貸倒損失回避による利益確保

それぞれの重要性について詳しく見ていきましょう。

連鎖倒産防止

連鎖倒産とは、1社が倒産した際、その影響を受けて連鎖的に倒産に至ることです。たとえば、取引先の入金を前提に、材料の仕入れや経費の支払いを行っている企業において買掛金が発生したとします。

企業が経済活動を続けるには、未回収分の資金を緊急に調達しなくてはなりません。資金が調達できなければ仕入れ先へ支払いができなくなり、連鎖倒産に陥る可能性があるのです。

連鎖倒産を防ぐためにも、特定の企業に依存しないように売上先を分散したり、与信限度額をきちんと管理したり、与信管理をしっかりと行うことが大切です。

資金繰り対策

債権の未回収が発生しても、必ずしも会社が倒産するというわけではありません。一時的に会社の損益が赤字になっても、資金繰りに問題がなく預金残高がプラスの場合には事業を継続することが可能です。

しかし、債権の未回収が継続的に発生する場合は話が変わります。債権の未回収が積み重なると、売上は立っているにも関わらず資金が底をついて倒産してしまう「黒字倒産」のリスクが出てきます。

取引先に対する与信管理をしっかり行い、債権を確実に回収することが重要です。

貸倒損失回避による利益確保

売掛金は不良債権とならないようにしっかりと管理しなくてはなりません。

仮に与信管理をしっかり行っておらず、債権を回収できずに不良債権となった場合、会社は債権を貸倒損失という損失として計上します。売り上げを計上しても貸倒損失を繰り返し計上していては、赤字になる可能性もあります。

債権を回収して資金繰りを安定させるためには、与信管理が必要不可欠といえるでしょう。

貸倒損失についての詳細はこちら

与信管理の方法

与信管理が会社の資金繰りを安定させる上で必要不可欠だとわかったものの、具体的にどのように与信管理を行えばいいのかわからない方も多いのではないでしょうか。

与信管理を行う際は、以下の4つの流れに沿って行います。

  • 取引先の選定
  • 与信調査
  • 与信限度額の設定
  • 債権管理

それぞれの項目について詳しく説明していきます。

取引先の選定

取引先の情報が不足していては、取り引きをしても問題がないかどうか判断できません。そのため、まずは取引先に関する情報収集を行います。

情報取集の方法としては、インターネットでの調査情報や有料調査サービスによる外部情報、直接取引先に訪問した際に得た内部情報などが挙げられます。

収集した外部情報や内部情報などから取引先に問題がないかどうか確認します。外部情報を精査する際は以下の3つをチェックしましょう。

  • 本社住所と登記簿の住所が一致しているかどうか
  • 公表されている役員名と差異がないか
  • 年商や資本金などの財務情報

与信調査

与信調査の説明図

次は与信調査です。外部情報と内部情報から、与信に直結する調査へと深堀りしていきます。たとえば、会社の情報を調査するにあたって、会社の代表者が頻繁に変わっていたとします。

通常は会社の代表者が頻繁に変わることはないため、評判や会社の雰囲気などから背景に何が潜んでいるのかを探っていかなくてはなりません。

登記簿によって、商号・住所・代表者・事業内容などの基本的項目の変更状況を確認します。住所が不自然に繰り返し変更になっている場合、代表者変更と同様、背景を探っていく必要があります。

些細なことでも気になった点は全て注意事項として残しておくと、後で見返しやすいでしょう。

与信限度額の設定

続いて与信限度額の設定です。調査を行った結果、問題ないと判断された場合は、取引先に与信限度額を設定することになります。

与信限度額とは、取引先に対してどのくらい売り上げを立ててもいいのかという1つの基準(上限)です。

新規の取引先の場合は取引実績がなく、与信限度額を高く設定するのはリスクを伴います。そのため、最初は与信限度額を仮に未回収になっても問題ない額に設定して様子を見ましょう。

また、取引実績が豊富な取引先であっても、急に債権を回収できなくなる可能性があります。一度設定して終わりではなく、年に最低1回ほど与信限度額の見直しを行いましょう。

債権管理

最後に債権管理です。未回収の債権の増加は、会社の資金繰りを悪化させ、最悪の場合には倒産に至る可能性があります。

そのような事態を未然に防ぐためにも、適切な与信限度額を設定するだけでなく、現時点で債権の回収状況がどのようになっているのかを適宜把握することが重要です。

未回収の債権は、時間が経過すれば経過するほど、回収できなくなる可能性が高くなります。そのため、未回収の債権があった場合は、すぐに債権回収に移行しましょう。

与信限度額の考え方

与信限度額のイメージ

与信限度額は、厳しく設定すれば設定するほど、売り上げが伸びにくくなってしまう点に注意が必要です。そのため、与信限度額を設定する際は、必要かつ安全な範囲内で設定することが大切になります。

与信限度額を設定する際は、以下の3つを押さえながら設定することをおすすめします。

  • 自社の純資産を基準にする
  • 自社の売上債権を基準にする
  • 取引先の仕入債務を基準にする

与信限度額を自社の純資産を基準にする場合は、仮に債権を回収できない場合でも、一定の割合までは耐えられる範囲に設定する必要があります。一定の割合とは、純資産の10%が一般的です。自社の純資産に一定割合をかけて信用度による格付けで微調整を行います。

売上債権とは、売掛金や受取手形の代金を受け取る権利のことです。一般的に売掛金は1~2か月程度で回収できますが、受取手形は2~3か月後になることも多いです。売上債権と手元の現金のバランスを踏まえながら、自社の売上債権に一定割合をかけて信用度による格付けで微調整を行います。

取引先の仕入債務を把握すれば、相手の支払い能力を推定することも可能です。仕入債務に一定割合をかけて信用度による格付けで微調整を行います。

まとめ

与信は企業間取引を円滑にするものですが、与信の設定を誤ってしまった場合は、売掛金を回収できず、資金繰りが悪化して倒産に至る可能性があるため注意が必要です。

そこで大切なのが与信管理です。相手の与信調査を行う、与信に応じた適切な与信限度額を設定する、未回収債権がある場合は適宜督促して回収して、会社の資金繰りを健全な状態に保ちましょう。

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