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債権管理とは|企業経営全体へ影響が強い債権管理の流れと重要性を解説 about receivables management

企業における債権管理の大きな工程は主に4つ~

債権管理とは、未回収となっている売掛金等の債権を確実に回収するために管理することです。主に売上管理、請求管理、入金管理、滞留債権管理の大きく4つの業務工程に分けることができます。

1.売上管理(売上締め・売上仕訳)→2.請求管理(請求書発行・請求書送付)→3.入金管理(入金情報取得・入金消込)→4.滞留債権管理(預金仕訳作成・滞留債権特定)→催促・督促

売上管理:「売上の締め」と「売上仕訳」

売上の締め

売上の締めとは、「月次」を主なタイミングとして、一般的には出荷・納品・検収・役務提供等など業種業態によって異なる収益認識基準によって売上を確定していく作業です。

売上仕訳

売上が確定したら、会計システムにて売上仕訳を計上します。

【売上仕訳の例】

掛売した場合の仕訳
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
売掛金 300,000 売上 300,000

売上を計上すると同時に債権として借方科目に「売掛金」を計上します。取引先毎の締日に合わせて支払われるので、代金を回収するまでは、売掛金となります。

前受した場合の仕訳

ビジネスモデルによっては商品の納品や役務の提供前に、一括で代金が支払われる場合があります。売上計上は商品を納品、もしくは役務が提供されたタイミングで行うものなので、一時的に前受金で処理し、納品と同時に売上を計上して振り替え処理を行います。

振り込まれた現金を前受金として計上する場合

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
預金 200,000 前受金 200,000

商品を納品した時点で前受金を振り替える場合

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
前受金 200,000 売上 200,000

一般的な仕訳例を挙げていますが、業界やビジネスモデル、企業ごとでも独自の会計計上・仕訳ルールがありますので、まずは、自社の基準を把握しましょう。

請求:「請求書発行」と「請求書送付」

請求書発行

売上が確定したら、請求書を発行します。請求書の発行自体は、法律上義務付けられているわけではありませんが、万が一、相手が支払いに応じない場合に、請求書を回収権の証明としても使用することが可能です。

請求書送付

作成した請求書を得意先へ送付します。アナログな方法であれば、請求書を印刷し手作業で封入・投函する作業となりますが、インボイス制度や電子帳簿保存法など、経理業務のデジタル化がトレンドとなっており、電子請求も主流となってきています。請求先メールアドレスのリストを作成し、システムで一括で請求書送付をする方法や、紙面の請求書でないと受理が難しい取引先があっても、発送を代行してくれるサービスなどを活用すると効率的に請求書発行が可能です。

【電子請求や発送代行が可能なサービスの例】

  • BtoBプラットフォーム請求書
  • 楽楽明細
  • マネーフォワードクラウド請求書
  • マネーフォワードクラウド請求書Plus

入金管理:「入金情報の取得」と「入金消込」、「預金(消込)仕訳作成」

入金情報の取得

請求書の送付が完了したら、次に入金情報を取得します。ファームバンキングというオフィス内に設置されている専用のPC端末より、入金情報を取得し紙で印刷する、もしくはデータ化する等が長年一般的でした。近年では、インターネットバンキングやマルチバンクWEBサービス等を活用して入金データを自動で取得することも可能となっています。

入金消込

入金情報が取得できたら、請求に対して入金漏れや遅延がないかを照合する入金消込を行います。入金消込は債権管理の中でも特に作業が煩雑で、以下のように取引先毎に特有の入金状況が発生することが多いため、ノウハウが担当者にたまりやすく、属人化しやすい工程です。

  • 複数の請求書が一括で入金される
  • グループ会社から入金されるので、請求先と入金元が一致しない
  • 入金元に同じ会社名が複数あり、どちらの入金か判別しづらい
  • 振込手数料や消費税の誤差で照合金額が合わない
  • エクセル等を使って作業するので、データ量が増えるとファイルが動かず、作業に時間が掛かる
  • 手動、目視で請求額と入金額を照合するため、ミスが発生する

など

上記のように、アナログな作業の場合、取引数の増加等で対応出来なくなることも多い工程です。また、入金消込は後工程の滞留債権を検知するにも非常に重要な作業となり、出来る限り正確に作業を行うことが求められます。

「預金(消込)仕訳作成」

入金消込が完了したら、仕訳を作成します。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現金(預金) 1,000,000 売掛金 1,000,000

実際に入金があった場合は、債権である売掛金を減少させて、現金預金を増加させます。
また、この預金(消込)仕訳を売掛金残高台帳や会計システムへ反映させることで、決算書やキャッシュフロー計算書等、経営判断をするための重要な指標に換算されていきます。

滞留債権管理:「売掛金残高表や回収予定表の更新・確認」「滞留債権の特定」と「催促・督促」

売掛金残高表・回収予定の更新・確認

預金(消込)仕訳の後は、売掛金残高表や回収予定表、滞留債権一覧表を中心に未入金となっている債権を確認していきます。

売掛金残高表:現在、売掛金残高がどれくらい残っているかを顧客別で確認する管理帳票
回収予定表:現在の売掛金がどのタイミングで回収されるか、回収予定日や回収予定額が確認できる管理帳票

ファクタリングや手形等の現物が多いビジネスモデルの場合は、入金予定表、売掛残高年齢表、資金繰り表等を作成し、管理している企業もあります。

滞留債権の特定と督促

売掛金残高表や回収予定表の情報を元に、入金予定日を超えて未入金になっている債権を特定していきます。

  • 滞留債権一覧表:売掛金のうち、販売管理システム等から算出した入金予定日を超えて未入金になっている債権を特定、一覧化する管理帳票。

上記で特定した滞留している債権に催促・督促をかけます。
基本的には、対象となる顧客の営業担当へ協力を仰ぎ、営業からお客様へ催促、それでも入金がなされない場合には、督促状という形で、先方へ書面の送付を行います。

以上が債権管理の一連の流れとなります。

債権管理業務はExcel等でのアナログ作業がまだまだ多い

債権管理の工程の中では、まだまだエクセル等の表計算ソフトで管理されていることも多く、手動や目視、二重入力等が発生しています。

例えば

  • 販売管理システムから受注データを出力し、エクセルで手動で加工し、会計システムへ手動で仕訳入力している
  • 入金情報の取得がアナログで、エクセルファイル修正が必要。
  • 入金消込をエクセルで行っているため、データが増えると動さが重くて時間が掛かる
  • 入金消込時の請求額と入金額の照合が目視になっている
  • 仕訳の計上は会計システムへの手動入力なため、二重作業が発生している
  • 売掛金残高表等の管理帳票がエクセルで作られているため、毎月手動で更新している
  • 管理帳票エクセルは複雑にマクロや関数が組まれていて、メンテナンスが手間

など、上記のように、アナログな手作業や目視作業がまだまだ残っています。

アナログな債権管理は、企業経営のリスクの種となる

アナログな債権管理のリスク①:業務が属人化して残業が増える

債権管理の工程の中でも、入金消込業務はとりわけ属人化しやすいと言えます。企業ごとに異なる支払規定やフローが存在することで、代金を受け取る企業はイニシアチブを持つ支払側の各企業に合わせて多様なパターンに個別対応する必要があり、システムによる汎用化が難しいのです。そうなると、特定の担当者のみに業務ノウハウが蓄積され、他メンバーのフォローも難しく、ジョブローテーションが組みづらい体制となり担当者の残業が増加してしまいます。

アナログな債権管理のリスク②:督促業務で営業の負担が増える

もちろん未入金が発生した場合は督促業務が必要ですが、請求漏れや入金消込ミスなど、アナログな債権管理によって発生してしまった本来不必要な督促業務は、営業部門への負担を増加させます。そうすると、本来受注がメインミッションである営業部門の活動を逼迫してしまう結果になりかねません。

アナログな債権管理のリスク③:督促ミスは顧客からの信頼を失墜させる

入金消込ミスをはじめとしたアナログな債権管理は、正確でスピーディーな滞留債権特定の障害となります。
督促をしなければならない滞留債権にすぐに気付けず、数か月遅れて督促をする、または誤った督促をした結果、「今更言われても支払いは出来ない」「ちゃんと支払ったはずだ、貴社の管理体制はどうなっているのか」など、顧客からの印象が悪くなる場合があります。

アナログな債権管理のリスク④:キャッシュフローに影響し、資金繰りが悪化する

代金を受け取る側の企業にとっては、キャッシュを回せていさえすれば会社は続きます。支払とは違い、仮に入金消込処理を怠ったとしても相手企業からクレームが入ることはありません。自分たちがその必要性を認識しない限り、当然ですが損益計算書上では黒字であっても、営業キャッシュフローはマイナスになり資金繰りが非常に厳しくなります。最悪な場合、貸倒が多発し黒字倒産が現実的になってきます。

売掛金の未回収が原因で黒字倒産した例

黒字倒産の例:1896年に創業した東証1部(現プライム)の化学薬品会社(以下、A社)が黒字倒産

損益計算書上は業績が過去最高なのに、翌年に倒産

A社は1896年に薬店として創業し、1970年には商社業態へ移行します。染料や工業薬品、化学薬品などで事業拡大し、2006年には東証一部(現:プライム)へ上場します。

東証一部へ上場したことを皮切りに中国へ進出し、化学品、電子部品の分野で業績を拡大します。2014年には、連結最終利益を4期連続で過去最高を記録し、売上高は2,000億円を突破しました。損益計算書上では、売上高、営業利益、経常利益、純利益ともに増収増益が続いており、A社の業績には、事業の陰りなどは一切見当たらないほどの好調ぶりでした。
しかし、この好調ぶりとは裏腹に2015年4月には、700億円を超える負債を抱え、債務超過となり経営破綻、倒産します。

倒産の要因は、多額の貸倒引当金

倒産の要因となったのは、中国の子会社で計上されていた売掛金に対し、多額の貸し倒れ引当金を計上したことに起因します。これは、中国事業における取引先の資金繰りが悪化して、中国子会社が売掛債権の回収や取引継続が困難であるにもかかわらず、架空の取引による粉飾を行っていたのです。

その事実を本社側が見抜けず、損益計算書上では、4期連続で過去最高の増収増益となる一方で、営業キャッシュフローが5期連続でマイナスでした。つまり、売上は伸長しているがキャッシュ(現金)を獲得できていない状態であったことを示しています。

営業キャッシュフローのマイナスを解消できないまま、金融機関からの借入等で財務キャッシュフローを向上させていましたが、多額の売掛金が回収不能となりました。金融機関からも、キャッシュフローに改善が見られないため、当然、融資継続が不可能となります。故に、好調に見えた業績から一転して、債務超過に陥ってしまったのです。

黒字・赤字も重要だが資金繰りが出来ているかが重要

企業は売上や利益が向上している状態を維持するのは、もちろん重要です。しかし一方で、計上した売掛金がしっかり回収出来ているか、回収見込の立たない売掛金がないかを日々チェックし、高品質な債権管理体制を構築することは、経営を維持していく上で非常に重要な工程と言えます。

アナログ管理・属人化のリスクを回避するなら、システム導入がおすすめ

債権管理をスムーズに行うには、手作業や目視、二重入力をなるべく業務から排除し、現在アナログ作業になっている工程を見直し、システム化することで業務を効率的に行うことが重要です。また、経理業務の中でも時間が掛かる決算(月次、四半期、年次等)業務を省力化し、経営に悪影響を及ぼす滞留債権を早期に検知できる環境を整えることで正常な資金繰りを行うことが可能になります。