2024年7月、「バックオフィスのベンダー・アウトソーサー4社が公開討論!システム選定・導入のコツを成功/失敗事例から徹底検証 !」をテーマにバックオフィスの現場を知り尽くしたベンダー・アウトソーサー4社で共催セミナーを開催しました。
プロジェクト型ビジネスに特化したERPを提供している株式会社オロ、予実管理クラウドシステムを提供している株式会社ナレッジラボ、経理業務のアウトソーシング及びコンサルティングサービスを提供しているメリービズ、入金消込のクラウドサービスを提供している株式会社アール・アンド・エー・シーの4社で、「システム導入」をテーマに公開討論。本イベントレポートではその内容をまとめてご紹介します。
バックオフィスによくある経営課題、あるべき姿
バックオフィスを取り巻く課題
R&AC 鴨下:本題に入る前にまず、バックオフィスの課題について視聴者の皆様と認識を揃えておきたいと思います。以下の資料では、バックオフィスを取り巻く潜在的な課題と、それによるリスクをまとめました。
R&AC 鴨下:続いて、本日のテーマに沿って「DX」、つまり社内システムに関する課題をより詳細に見てみましょう。
社内システムを取り巻く課題(例)
- イニシャルコスト/ランニングコストを重視し、安価なシステムを選定したが、使いにくく業務負担が大きい
- 現担当者が慣れているシステムを使用しており、担当者が変わった時に同等のパフォーマンスが期待できない可能性がある
- 人的リソースが枯渇していて、1人が複数業務を掛け持ちしていることによるリスクが大きい
- 転職による急な退職が発生しかねない
- 情報の集約が不十分なため、情報共有に時間がかかる
- 部門やプロジェクトを跨いだコミュニケーションが少なく、連携が不十分である
- 管理会計の分析などで集計したい項目の分析軸が揃っていない
- 内部統制や監査に準拠したプロセスになっていない
R&AC 鴨下:このようにシステムに関する課題だけでも状況は様々ですが、本日はこれらの課題を以下の3つの項目に分けてお話しします。
理想のバックオフィスを実現するポイント
- コスト/負担工数を削減する
- 属人化を解消/防止する
- 休職者・退職者が発生するリスクを抑える
最適化の手順(あるべき姿)
R&AC 鴨下:ここからは各社の知見や成功事例を交えつつ、①〜③のポイントを踏まえたシステム導入について、具体的な手順をお話しします。具体例やコツをお話しするにあたって、まずは私からシステム導入の大まかな流れをご紹介しておきます。
まずは着地点を会社全体で見極めて共有することからスタートします。自社内で方向性が見極められないのであれば、外部から第三者の意見を求めたりコンサルティングを導入したりするのも状況改善していく上で妥当性のある一手だと思います。社内での目線合わせが終わったら、次に自社が今どういう状況なのか整理します。現状調査をしていくなかで自ずと課題・理想が顕著になるはずなので、それに対して最適なツールを選定して導入するという流れです。
もちろんツールを導入して終わりではないので、導入効果はどうだったか・新たなリスクは無いかを再度調査します。そのうえで、次に解消すべき課題や他の業務についても、同じような手順で検討を進めます。この流れをルーティンとして定期的に回すことが理想であり、自社の健康状態を保つための「あるべき姿」とも言えます。
課題・導入目的に応じたシステム選定の流れ
属人化の温床になる業務領域とは
ナレッジラボ 浅井:ここからはより具体的に、システム導入までの流れを解説します。ツール導入の前段階として現状業務の調査が必要というお話がありましたが、下の図はまさにバックオフィスのありがちな姿を表したものです。
ナレッジラボ 浅井:部署を超えて業務が重なる赤丸の部分では、業務プロセスや領域が混濁します。例えば、給与計算は本来であれば労務の担当であるにもかかわらず、業務ステップが複数の部署/担当者に横断してしまって、「経理の経費精算担当が、労務の給与計算担当も兼ねている」など。バックオフィスではこのような状況が発生しやすいですが、お互いの仕事の領域が重なった途端に業務フローの説明が難しくなりますし、属人化の温床にもなります。
このように業務プロセスが混濁している状態を「うちは特殊なので…」という一言で放置せず、調査を進めることが肝要です。それができている、いわば理想的な状態が以下の図です。
ナレッジラボ 浅井:ただ、これを実現するのは難しく、現状を把握している人と、理想(あるべき姿)を描ける人が不可欠です。それだけではなく、バックオフィス業務の効率化についてトレンドを抑えて最適な判断ができる人がいなければ、業務フローの整理は難しくなるでしょう。というわけで、システム導入の最初の一歩としては、まずリソースを確保することと、知見を取り入れることが第一とも言えます。
課題に合わせたシステム導入の具体例
メリービズ 長谷:会計システムの導入・切替の背景は様々なので、システムの導入・切替を進める際には「自社の課題は何か」「その先に課題になりそうなことは何か(似たような規模/フェーズの企業では何が課題となっているのか)」を予見していただいたうえで進めることを推奨しています。
例えば、中堅・中小企業では「月次決算が締まるのが遅い」というお悩みがよく聞かれますが、実は業務プロセスにも課題があるなど経理部全体の非効率も課題となりがちです。このように、自社の潜在的な課題を発見するために、以下のスライド資料を活用いただければと思います。
メリービズ 長谷:また、システム導入・切替に成功している企業様に共通する特徴として、好機を捉えて積極的に外部の知見に頼っていることが共通しています。
成功している企業様の特徴例
思考様式
- 自社で賄えないノウハウやリソースは外部から調達するものとする
- 世の中の潮流を意識しつつ、打ち手を実行(「世の中はこうなのでこうするのが自然」という思考)
- 事業承継タイミングも好機と捉え、攻めの姿勢で改革を実施
オペレーション
- 改革に必要なメンバーのリソースを確保
- 転職者(有識者)や外部の専門家が入るタイミングを有効活用
- その企業に長年属している「ベテラン選手」の業務を丁寧に棚卸し
R&AC 鴨下:浅井さんと長谷さんのお話を伺っていて、改めて設計が一番大事だと思いました。「これまでこうやってきたから」と非効率なフローを放置しておくのではなく、社内外問わずアドバイスを受けて初めて気づくこともありますからね。
メリービズ 長谷:仰る通りで、設計の段階で現場サイドと経営サイドがしっかり目線合わせしている企業様は成功されている印象です。未来に向けた目線をしっかり合わせることが大事ですし、当社によくご相談いただくところでもあります。現状業務に関しては特に、現場の方や長く担当されている方しか把握していない「ブラックボックス化」している領域も多いですからね。
ナレッジラボ 浅井:ある意味、成功している企業様は上席の方が現場担当者に(システム導入・切替を)任せているケースも多いように思います。
オロ 吉井:システム導入・切替にあたって社内でコンセンサスを取るとなると、反対派の人がいたりなど困難も多いかと思います。ベンダー/コンサルタントとしてDXをご支援する際に、「まずここから始める」など最初の一歩として作成するものはありますか?
メリービズ 長谷:はい、鳥瞰図のようなものを最初にお渡ししています。「どの情報が何を経由して会計システムに流し込まれるか」を見える化します。そもそも、それを形にするのが難しかったり、見える化して初めて「あれ、そういう業務をしていたの?」と業務フローが明らかになるケースもありますね。事業の成長に伴って業務は複雑化することが多いので、現状業務を調査して見える化するところからご支援させていただきます。
オロ 吉井:なるほど。「(システムを)導入しないといけない・切り替えないといけない」と、社内で目線を合わせるために、まずは業務フローを可視化するということですね。
ベンダーの導入事例から考える!システム選定~導入までのツボ
①コスト/負担工数を削減する
オロ 吉井:当社のリサーチによると、生産性向上・コスト削減の機運の高まりをきっかけにシステム導入を検討した企業は全体の4割以上にもなります。では、削減したい工数・コストは一体どこにあるのか。
業務効率化で使われるフレームワークに「ECRS(イクルス)の原則」があります。下の図のように、E→C→R→Sの順で進めていくことで効果があると言われており、これを利用して、作業に無駄がないか・違う方法を取り入れたほうが効率的かなどを確認します。
オロ 吉井:上記の手順で、まずは業務を見える化・棚卸ししていき、大きくコストがかかっている部分から削減します。そのためにシステム導入を検討するのも一つですし、単純にやらなくていい業務をなくすだけでも効率化になりますよね。生産性向上・コスト削減をきっかけにシステム導入を検討される企業様が多いですが、どのコストを削減するのか明確にしてから走り出すことが成功への近道です。
ぜひ、こちらの事例もご確認ください。
②属人化を解消/防止する
R&AC 鴨下:当社からは属人化の解消に成功された事例をご紹介します。システム導入によって、入金消込の属人化が解消したケースです。入金消込業務については、潜在的に何かしら課題があると認識されている方も多いかもしれませんが、法的なリスクがあまり寄与しない領域ではあるので、それこそ担当者のご退職やシステム切替のタイミングがきっかけとなるケースが多いです。
R&AC 鴨下:システム導入によって、入金情報の紙出力・販売管理システムとの目視確認・手入力などがシステム化でき、会計システムへの仕訳計上までが一連のフローとして運用できるようになった事例です。
③休職者・退職者が発生するリスクを抑える
メリービズ 長谷:最後に当社から、担当者様の定年退職をきっかけにクラウド会計を導入された事例をご紹介します。
特徴的なのは、100年以上続く老舗企業様である点。ご退職をきっかけに、事業承継のリスクや業務効率化に思いをめぐらせておられました。その中で、100年以上続く企業ではあるが、これからの時代を生き抜いていくためにやはり業務効率化・脱属人化が必要ということで改革を断行されました。長年の歴史をお持ちの企業様でも、しっかりとDX化・システム導入できた成功事例です。
ナレッジラボ 浅井:色々な企業様の成功事例もご紹介させていただきましたが、業務効率化はどの企業様でも急務かと思います。そこに今一度目を向けるきっかけとして、本日のセミナーのノウハウを持ち帰っていただければ幸いです。
メリービズ 長谷:大事なのは自社にとって何が必要で何が不要かを見極めることです。資料も参考にしていただきつつ、改めてそこに立ち返り、吟味していただければと思います。
オロ 吉井:個人的には、成功している会社は外部の知見を取り入れているという点が印象に残りました。今後も我々は様々な観点で発信を続けていくので、ぜひ次回のセミナーにも参加いただくなどコミュニケーションを取り続けられれば幸いです。
本日はありがとうございました!