未払金とは?間違えやすい勘定科目と仕訳方法をわかりやすく解説
簿記の勘定科目の中には誤って認識してしまう科目がいくつかありますが、「未払金」もその1つといえます。似たような勘定科目として「買掛金」や「未払費用」などがあり、どのように使い分ければよいのかわかりにくい面があります。
「未払金と未払費用はどこが違うのか?」「未払金を計上するタイミングはいつなのか?」など、未払金に対して疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか。
以下では、未払金とは何か、買掛金や未払費用との違いは何か、未払金の計上、消込のタイミングはいつか、などについて詳しく解説します。また、未払金でよくある質問についても取り上げていますので、ぜひ参考にしてください。
目次
未払金とは?わかりやすく解説
未払金とは、日々行われている営業取引以外の単発の取引において生じた債務を対象とする勘定科目のことです。
具体的には「事務用品」や「備品」などを後払いで購入した場合、未払金に計上されます。特に多いのが、クレジットカードやショッピングローンで事務用品や備品類を購入した場合などです。代金の支払いは後日となるので、支払う前段階では未払金として処理されます。
また、貸借対照表は大きく流動資産、固定資産、流動負債、固定負債、純資産の5つの区分になっていますが、未払金は「流動負債」に該当します。ただし、ワン・イヤー・ルールにより、1年を超えて支払いができない時は固定負債となります。また、貸借対照表の日付の翌日から1年以内に支払期限がある場合は「未払金」、1年を超える時は「長期未払金」となります。
たとえば、会社で使用する車を購入してそのローンを組んだ場合、頭金以外のローン部分については未払金となりますが、経年にわたって分割払いで支払いを続ける場合は長期未払金となります。
「買掛金」「未払費用」など類似項目との違い
未払金に似た用語として「買掛金」、「未払費用」などがあります。
意味 | 未払金との違い | |
---|---|---|
買掛金 | 販売目的で商材や原材料を購入する仕入や外注加工費として生じた債務。 | 未払金は、販売目的で商材や原材料を購入する仕入や外注加工費以外の取引で生じた債務。 |
未払費用 | 継続的な取引でサービス代金を後払いする際に使用する勘定科目。たとえば家賃など。 | 未払金は、継続的でない取引で物品・サービスの支払いが確定しているものについて後払いする際に使用する勘定科目。 |
・買掛金
買掛金とは、仕入や外注加工費など営業活動で生じた代金支払いの義務に対して使用する勘定科目です。
未払金と同じく貸借対照表上では流動負債に該当する債務ですが、買掛金は主たる事業の仕入れや外注加工の依頼のうち、代金が未払いのものを言います。一方、未払金も「購入したものの代金の支払義務」である点は買掛金と同じですが、消耗品費や事務費用など、本来の営業活動以外の出費で生じた債務が対象となります。本来の営業活動における債務か否か、という点で大きく違います。
・未払費用
未払費用とは「継続的にサービスの提供を受ける取引において、すでに提供された役務に対して、いまだ利用分の支払いが終わっていない」ものを計上する勘定科目です。たとえば、保険サービス料金や、土地の賃借費用、従業員への給与などが該当します。
未払金と異なるのが、未払費用は「継続的な取引」で生じた負債であるという点です。
また未払金は「役務の全てが提供されている」ものであるのに対し、未払費用が「全ての役務の提供がされていない」ものであるという点も異なります。
未払費用についてしっかりと理解するために、従業員への給与支払いについて考えてみましょう。雇用契約は、通常は毎月決まった期間で計算をしますので「継続的な取引」に該当します。たとえば、「20日締め、翌月25日払い」の形をとっている会社が、決算日を迎えた場合を想定します。
実際に給与が支払われるのは翌期であるとしても、決算日にはすでに先月「21日から末日まで」の役務(従業員の労働)が提供されているため、この期間に発生した支払いの義務は、当期中の費用として計上されなければなりません。この期間の対価について、「すでに提供された役務に対して、いまだ利用分の支払いが終わっていない」部分であるため未払費用に計上します。
一方で、パソコンや機械などを購入した場合などは、単発的な取引であり、「継続的にサービスの提供を受ける取引」ではないため、未払金として計上します。相手方より役務そのものの提供(パソコンや機械などの提供)は完了していて、その対価についてまだ支払っていない状態のためです。
未払金の仕訳方法を実例とともに解説
では未払金の仕訳方法について、実例を挙げてご紹介しましょう。
・商品以外のものを購入した時の仕訳
今月3万円の電気代が発生し、代金は一括で翌月末に支払うケースを考えてみましょう。電気代は主たる事業の仕入れや商品原価に関係して生じた負債ではないため、買掛金ではなく未払金として扱います。
帳簿への記入は、資産・費用が増加した時は「借方」、負債・純資産・収益が増加した時は「貸方」に計上しますので、費用である電気代は「水道光熱費」として借方に、流動負債である未払金は貸方に記入します。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
水道光熱費 | 30,000 | 未払金 | 30,000 |
・未払金を支払った時の仕訳
ではこの電気代を計上したケースにおいて、支払日である翌月末を迎え、その代金を普通預金で支払ったとしましょう。この場合の仕訳は以下の通りです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
未払金 | 30,000 | 普通預金 | 30,000 |
流動負債の減少となるため未払金を借方に記載し、代金の支払いは「普通預金」の流動資産の減少となるため貸方に記入します。これで記載は完了です。
未払金を計上するタイミング
未払金の計上のタイミングは、現金の出入りではなく取引が発生した時点です。たとえば、事務用品として文房具を購入し支払いを月末にした場合、支払い日ではなく商品を購入した日付で仕訳を行います。
未払金を消し込むタイミングについては、代金の支払いを済ませた時点です。この場合、月末に代金を支払った日付で起票します。
未払金でよくある質問
未払金に対するよくある質問としては、「未払金を修正したい場合は?」「未払金がマイナスの場合は何が原因?」などがあります。
未払金を修正したい場合は?
月次決算のタイミングで、未払金の計上にミスが発覚することもあります。たとえば「未払金の仕訳を間違えてしまった」という場合、どのように対応すればよいでしょうか。
こうした場合、まず間違って起票した仕訳と反対の仕訳を行います。その後、あらためて正しい仕訳を行い、修正すれば問題ありません。
未払金がマイナスの場合は何が原因?
未払金がマイナスになるのは、費用の計上が行われていない、もしくは未払金ではなく別の科目に誤って計上している可能性があります。対処法として、月ごとの未払金の残高をチェックして、帳簿上の数値と実際に支払った代金の突き合わせが必要です。
未払金を正しく理解して正しく会計処理を行おう
未払金の会計処理に関するポイント
- 未払金は、日々行われている本来の営業取引においてではなく、単発の取引において生じた債務を対象とする勘定科目です。仕入原価や外注費用に関連して生じた債務に対して使用する勘定科目である「買掛金」や、継続利用するサービス代金を後払いする際に使用する勘定科目である「未払費用」とは異なるので注意しましょう。
- 未払金は流動負債であるため、発生した際は帳簿の「貸方」に記載します。その際、「借方」に記載するのは費用項目や購入したものです。その後、普通預金から代金を支払った時は、未払金を借方に記載し、「普通預金」を貸方に記入して消込をします。
- 未払金の計上は、取引が発生した時点で行います。文房具を購入し支払いを月末にした場合は、支払い日ではなく商品を購入した日付で仕訳を行います。また、消込のタイミングは実際に代金を支払った日付で行います。