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未払いを解決する督促状の書き方|催促状、催告書との違いや書く際の注意点も解説
「督促」とは未回収の債権などに対して、相手側に支払を促すビジネス上の手続きです。督促には一定のルールがあり、受け取った側がそれを放置していると、事態が深刻化するリスクもあります。
この記事では督促手続きの詳細と、放置した場合の問題点について解説します。
目次
督促とは、ある約束の実行を促すことであり、一般的に使われる催促という言葉と大きな違いはありません。しかし、実際には「未回収債権(約束)の決済(実行)を求める」というケースのように、行政機関や金融機関などが然るべきタイミングで使用する言葉です。
ビジネスの分野では、支払われるべきお金が期限内に入金されない場合に、企業や金融機関などが督促を行います。また国や自治体も、税金などの収納を促す時に督促を行います。では、具体的にどのような立場から督促という行為が実施されるのか、3つのケースに分けて紹介します。
企業や個人事業主は取引先や顧客に対して商品・サービスを提供しますが、その対価が支払われないと経営が成り立ちません。そのため、支払期日を過ぎた場合には未回収債権として、督促状を送り、支払を促す必要があります。
銀行からの融資に対しては、通常、毎月期日を設けて返済を行います。しかし返済に遅延や停滞が生じた場合、金融機関は督促状を発送して支払を促します。
個人が納めるべき税金については、滞納が生じた場合に国や自治体から督促状が送られます。滞納期間が長期になると、延滞金まで記載された督促状が届きます。
督促しても相手側が支払の意思を示さない場合、督促状の送付を繰り返すことになりますが、督促状に法的拘束力はありません。相手側に支払義務を果たさせる時には、法的手段をとる必要があることに注意してください。
催促と督促を判別するには、強制力のレベルを理解すると分かりやすいかもしれません。ビジネスの分野でも督促のほうが強制力は強く、催促はほとんど強制力をもたないと判断されます。
たとえば、取引先からの支払が滞った場合、今後の取引のことも考慮すると、最初から強い調子で支払を迫ることはできません。何らかのミスで入金が遅れている可能性も考えられるため、まずは電話かメールで連絡をし、先方の状況を聞きます。連絡が取れないか、連絡を取った際に提示された期日を過ぎても振り込みがない場合、催促状を送って支払が済んでいない状況を知らせます。この時の催促状には、相手に支払を求める強制力はありません。
それでも相手側から反応がない場合、今度は督促によって支払を促します。取引先には、支払義務がある旨や支払われない場合には対応手段を執行する旨などを記載した督促状を送ります。督促状では厳しい表現も用いられますが、やはり法的な強制力はありません。
催促状とは督促状に先立って送付するものです。相手側に責任や義務があることを伝える目的ではなく、あくまでも相手に未払いの状況を再確認してもらうことが催促状の役割です。
督促状よりも穏やかな文面での通知になりますが、もしも取引先や顧客に間違って催促状を送ってしまうと、重大な信用問題になってしまうので事前の詳細なチェックが必要です。間違いなく未払いが生じていることを確認してから催促状を送付します。
一般的には最初に催促状を送り、それで反応がない場合、督促状を送付します。督促を繰り返しても問題解決に至らない場合は、法的手段の執行に移行する前の最終的な通知として、催告状(さいこくじょう)を送ることもあります。ただし、催促状、催告状、督促状それぞれに法的拘束力はありません。
督促状は通常の郵便物の表面に、「親展」や「至急開封」などの言葉が印刷されています。通常は「督促状」と直接的に書かれることはありません。では督促状はどのようなケースで送られてくるのか、対処法も含めて考えてみましょう。
ここまでで紹介してきたように、支払などの約束を履行しないままでいると、履行を促す催促状が送られてきます。その時点で何らかの対応をすれば、続けて督促状が送られてくることはないでしょう。
問題になるのは、催促状を放置したまま何の対応もとらなかった場合です。この段階になると、約束を守る意思がないと判断されるため、状況の深刻さが1ステップ上がって督促状の出番になるわけです。
実際に督促状が手元に届いた場合には、そのまま放置せず内容を正しく確認した上で、次のいずれかの対応策をとる必要があります。
督促状を受け取っても、精神的もしくは経済的な理由などで、開封することを避けたまま放置してしまうことがあるかもしれません。ただし、そのままでは日を追うごとに状況が悪化してしまいます。
では、督促状に対して何も反応せず、放置状態を続けているとどうなるのか、融資の返済が滞っているというケースを例に、どのように状況が変化するのか解説します。
督促状に対して何も反応しないでいると、督促状は繰り返し送られてきます。文面は毎回同じではなく、徐々に厳しい内容に変化するのが一般的です。
最初の督促状は返済の依頼という文面になることが多く、回を重ねるごとに返済の責任を問われるようになるでしょう。最終的には法的手段など、次の段階に移行するという内容が送られてきます。
融資のように金額が大きい場合、通常返済は分割して行いますが、督促状の内容を確認しないでいると、分割返済の権利ともいえる「期限の利益」を喪失する場合があります。
「期限の利益」とは、「『期日までは金銭を支払わなくてもよい』という、債務者側にとっての利益」を指します。両者の合意がとれていれば、分割での支払いをすることも「期限の利益」があることで可能になっています。
「期限の利益」がなくなった場合、債権者は返済期日をまたずに一括で支払いを請求することができるようになります。ここで、債務者が一括で支払うことができない場合、債権者は裁判所を通して債権を回収するように話を進めます。
債権に担保が設定されている場合はそれに則り手続きが進められますが、担保がない場合は差押によって債権回収が行われます。そうなってしまえば、経営が立ち行かなくなる可能性も高くなってしまいます。期限の利益は失わないように動くのが一番とはいえ、失ってしまった場合は、ただちに弁護士に相談しましょう。
督促状での返済請求が限界にくると、債権者(融資元)は法による支払督促を行う可能性があります。この場合、簡易裁判所から特別送達という形で支払督促が届きます。
ここまで放置してしまうと、債権者による強制執行を受け入れる意思があると見なされます。
督促状を放置し続け、さらに裁判所からの支払督促まで放置してしまうと、債権者によって財産の差し押さえが行われる可能性が出てきます。ここまでくると異議申し立てもできず、債権者側の主張通りに法的手段が執行されてしまいます。
以上のように、督促状を放置しておくと、事態が好転する可能性はなく、時を経るごとに状況は深刻化します。そうなる前に、現状がどの段階なのか必ずチェックすることが重要です。
支払督促が届いたとしても、内容を確認して異議申し立てを行えば、正当な裁判に移行することもできます。とにかく督促状を放置することは絶対に避け、必ず中身を確認して適切な対応をとるようにするべきです。
最後に、自ら督促状を送付する立場になった場合の、手続きの進め方について紹介しましょう。督促する相手が大切な顧客や取引先になる場合もあるので、ミスや行き違いがないように確認を徹底する必要があります。
まず相手側からの入金遅れが間違いないと確認できたら、メールや電話で状況を説明します。それでも相手側に動きがなければ、催促状を送付してしばらく様子を見ることになります。
催促状の送付から一定期間経過したら、相手側が対応していないことを確認し、今度は督促状を送付します。督促状を送る回数に規定はありませんが、督促状では問題解決が不可能と判断した時点で、法的手続きを進めることになるでしょう。
督促状の詳しい書き方については、「未払いを解決する督促状の書き方|催促状、催告書との違いや、書く際の注意点も解説」で解説しています。ぜひ参考にしてください。
企業や個人事業主にとって、債権が回収できないことは経営に大きな影響を与えます。しかし、大切な顧客や取引先に強い態度で支払を迫ることは、その先を考えると難しいかもしれません。
催促状や督促状には、相手側の気分をなるべく害すことなく、穏やかに支払義務を通知するという役割があります。ここで、督促状に関する重要ポイントを再度まとめておきましょう。
債権の回収を円滑に行うためには、相手にとって失礼にならない内容で、相手の行動を促す督促状を作成する必要があります。