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売掛金の仕訳方法を事例と実務の流れを交えてわかりやすく解説

売掛金の仕訳方法を事例と実務の流れを交えてわかりやすく解説

売掛金とは、商品やサービスを提供した時に生じた売上に対して発生した未回収の代金をあらわす勘定科目です。
 
たとえば製造業や卸売業では、製品や商品を取引先に納品するたびに、毎回現金で決済を行うことはありません。通常は、納品した分の代金を、一定の期日にまとめて支払うという約束を取り交わします。この売上に対して発生した代金を受け取る権利が「売掛金」です。
 
売掛金は貸借対照表(B/S)の勘定科目で、「流動資産」として分類されます。簿記の実務では、商品やサービスを相手側に提供した時点で収益を認識し、売掛金として仕訳を計上します。その後金銭の受け取りが実現したタイミングで、売掛金回収の仕訳を起票します。売掛金の詳細については、「売掛金とは? 」の記事を参照してください。

 

目次

売掛金の処理の流れ

貸借対照表を電卓で計算して確認

売掛金は、商品を相手方に引き渡し帳簿に計上した後は、代金を回収したタイミングで、決められた手順に従い処理を行います。まずは、その3つのステップを確認しましょう。

1.売上計上

売掛金とは、商品やサービスを提供した時に生じた売上に対して発生した未回収の代金を債権として計上したものです。
 
なお、実際に売掛金を計上するタイミングは、「商品を提供した時点」をいつにするかによって異なります。「商品を提供した時点」の決め方、捉え方は企業に委ねられており、事業者の事情に合わせて選ぶことができます。具体的には、「取引先に商品を発送した日」あるいは「取引先に商品が届いた日」、また「相手が商品を検収した日」のいずれかを、収益の「実現」(売上を計上する日)と考え、売上の計上・売掛金の計上の仕訳を行います。
 
こうした、「商品を提供した時点」で収益を認識し、売上を計上する考え方を「実現主義」と言います。

2.請求書発行と入金確認

請求書の確認

商品やサービスの提供時には、取引先に納品書と請求書を送付します。請求書の発行業務は正確さが求められるため、手入力や封入作業による人的ミスが発生しないよう、請求業務を自動化するシステムで業務を効率化する企業が増えています。その後は信用取引の原則に基づいて、請求書を受け取った企業は該当する期間の請求額を合計して支払いを行います。
 
代金を受け取った企業は、請求した金額と入金額にズレがないかどうか、慎重に確認しなければなりません。

3.売掛金の入金消込

入金確認で問題がないことが確定したら、売掛金の入金消込作業を行います。この作業により、売掛金として計上されていた債権を消し込みます。もしも、入金額に過不足があった場合には、それに対応する処理を行わなければなりませんが、その点については後で解説します。

売掛金の仕訳方法

ここからは、売掛金の具体的な仕訳方法について解説しますが、まずは概要をとらえておきましょう。売掛金は売掛金元帳に起票して管理し、あわせて振替伝票や入金伝票を作成します。
 
取引先との間で売上が発生した場合、商品の発送日や、検収日など、会社の売上計上基準の日に合わせて売掛金を計上します。次に取引先の支払期日に入金確認を行い、請求額と入金額の間違いがなければ売掛金の消込作業を行い、売掛金元帳に記載します。

売掛金の仕訳例

電卓で売掛金の計算

以下で基本的な仕訳と実務的な仕訳について、順番に解説していきます。

 

売掛金の仕訳

売掛金は実現主義で仕訳をしなければならないため、「取引先に商品を発送した日」あるいは「取引先に商品が届いた日」、また「相手が商品を検収した日」のいずれかの日付で起票します。
 
具体的には借方に「売掛金」、貸方には「売上」を記入します。(以下、消費税等は考慮せず売掛金を1,500,000円として解説)

借方 貸方
売掛金 1,500,000 売上 1,500,000
 

売掛金の回収

代金が指定した預金口座に振り込まれ、売掛金が回収できた場合、借方には「普通預金」、貸方には「売掛金」と記入します。
 

借方 貸方
普通預金 1,500,000 売掛金 1,500,000

なお、取引先から小切手で代金を回収した場合は借方を「現金」とし、手形で回収した場合は「受取手形」と記入します。

借方 貸方
現金 1,500,000 売掛金 1,500,000

借方 貸方
受取手形 1,500,000 売掛金 1,500,000

 

売掛金が一部回収できた場合

取引先から売掛金の全額ではなく一部が回収できた場合は、入金された金額で仕訳を行います。たとえば売掛金1,500,000円のうち、預金口座に500,000円の入金があった場合、以下のように仕訳を行います。この時には全額で消込処理をしないように注意が必要です。
 
また、摘要欄に一部入金であることと、いつの売掛金に対応するものなのかを記載しておくと後日の確認時に便利です。
 

借方 貸方
普通預金 500,000 売掛金 500,000

 

返品処理を行う場合

もしも製品や商品が返品された場合、返品された商品の金額分、計上していた売掛金と売上から差し引く仕訳を行います。たとえば取引先から50,000円分の返品があった時には、以下のように仕訳します。
 

借方 貸方
売上 50,000 売掛金 50,000

売掛金が回収不可能・未回収の場合の仕訳方法

売掛金対応を行う会社のイメージ

売掛金はお互いの信頼の上に成り立つものですが、取引先の経営状況などによって回収ができなくなる恐れもあります。この場合、以下に解説する仕訳のどちらかを行う必要があります。

貸倒の事実が発生した場合の仕訳

貸倒の事実が発生したときは、貸倒損失を計上します。貸倒損失とは、回収できなくなった債権を処理するための勘定科目であり、回収不能の売掛金を損金として計上できます。損金計上することにより、法人税の課税対象額を減らすことが可能になるため、経営への影響を緩和できます。
 
ただし、どのようなケースでも貸倒損失が計上できるわけではなく、税法上で認められるのは以下に挙げる3つの場合です。

  • 法律的に金銭債権が消滅した場合
  • 金銭債権の全額が回収不能となった場合
  • 一定期間の取引停止後、弁済がない場合

さらにこれらの条件に合致するケースでも、会計処理の時期や方法に間違いがあると、貸倒損失が認められないこともあるので注意が必要です。

貸倒になる可能性がある場合

貸倒の事実が発生していない売掛金は、貸倒引当金の計上を検討します。貸倒引当金とは、取引先の倒産などで、回収不能となる損失額をあらかじめ予測して計上する引当金です。将来の支出に備えるものなので「負債」の勘定科目です。
 
貸倒の危険度が高い場合は、取引先それぞれに回収不能額を見積もり、それを貸倒引当金に設定する「個別評価」を適用します。一方で貸倒の危険度が比較的低い場合には、売掛金などに一括して法定繰入率を掛け、その金額を貸倒引当金に設定する「一括評価」を適用します。

売掛金でよくある質問

売掛金を計算

売掛金の仕訳にはさまざまなケースがあるため、どのようなやり方で計上すればよいのか迷うことがあるかもしれません。その場合どう対処すべきか、よくある質問の中から代表する2つの質問を紹介しましょう。

振込手数料を引かれた売掛金の仕訳方法

Q:取引先が振込手数料分を差し引いて入金した場合、どのように仕訳すればよいでしょうか?
 
A:その場合、振込手数料を別にして仕訳を行うか、振込手数料を売上の値引きとして仕訳を行うか、どちらかの方法を選択して計上すればよいでしょう。

 

①振込手数料を別にして仕訳を行う場合

借方 貸方
普通預金 1,499,300 売掛金 1,500,000
支払手数料 700

②振込手数料を売上の値引きとして仕訳を行う場合

借方 貸方
普通預金 1,499,300 売掛金 1,500,000
売上高 700

振込手数料は少額ですが、年間で考えるとかなりの金額になります。上記2つの方法のうち、どちらを選んでも問題ないですが、融資などで有利になるように売上を多く計上するか、税金対策として売上を少なく計上するか、状況に合わせて判断するとよいでしょう。

売掛金が合わない時の原因は?

Q:売掛金残高が合わないことがあるのはなぜですか?
 
A:売掛金の管理を正確に行っていても、残高が合わなくなるケースがあります。その場合、主に以下に挙げる3つの原因が考えられます。

  • 売上の金額計上ミス
  • 請求金額のミス
  • 消込した金額のミス

こうしたミスは、一つひとつの仕訳ごとに厳密なチェックをすれば防げますが、件数が多くなると入力や確認による作業ミスが増える恐れがあります。

売掛金の仕訳を正しく理解して会計処理を行おう

経理業務をチェックリストで確認

売掛金の仕訳は帳簿だけの問題ではなく、正しく処理できないと企業経営にも影響が出てしまいます。最後に、売掛金を適切に仕訳するポイントをもう1度まとめておきましょう。

  • 売掛金の処理は、売上計上~入金確認~入金消込という3ステップで行います。また売掛金は貸借対照表の資産の勘定科目であり、「実現主義」で仕訳されます。
  • 「取引先に商品を発送した日」あるいは「取引先に商品が届いた日」、また「相手が商品を検収した日」のいずれかの日付で売掛金元帳に仕訳を行います。
  • 売掛金が回収できなくなった場合、貸倒損失もしくは貸倒引当金を計上して処理を行います。

もしも、売掛金の処理が複雑になり、会計上でミスが目立つようになったら、業務全般をシステムで管理することを検討してみてもいいかもしれません。

 
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