パネルディスカッション
経理における理想的な4つのゴールとは?
R&AC 鴨下:今回のセミナーで取り上げるテーマは ”ムリ・ムダのない「予実管理」の最適解とは” です。
予実管理は、多くの企業で属人化・ブラックボックス化しやすい領域で、ゴールをどのように定めていくかが重要な鍵と言われています。
皆さんは、予実管理において業績の着地予測を瞬時に回答できますか?管理担当者のスキルや勘、経験に依存していないでしょうか?
今回は、この問題提起に対し、さまざまな事例を通じて「予実管理」の理想的なゴールを4つに分けてお話しできればと思っております。
予実管理の理想的なゴール
- オペレーションのムリ・ムダがない
- 誰でも業務ができる
- 欲しい数字が見えて、適切な判断に移すことができる
- 予実管理シートを使って予実ギャップについて打ち手を考えられる
ひとつずつ取り上げ、ディスカッションしていきます。
オペレーションのムリ・ムダがない
図1:オペレーションのムリ・ムダがない
R&AC 鴨下:まずは「オペレーションのムリ・ムダがない」について伺いたいと思います。ナレッジラボ社浅井さん、いかがでしょうか。
ナレッジラボ 浅井:オペレーションのムリ・ムダは、経理に最もありがちな課題かと思います。具体的なイメージを図1に表していますが、「グレーのファイルすべてに数値を入力してください」という連絡が、経営管理部門と事業部門間で発生すると想像してみてください。この状態では、作業工程が多く手作業ばかりのため、どこでファイルが破損してもおかしくありません。月次の締め作業が終わった後、この作業を2、3営業日で分析し、レポート作成するにも、あまりに時間が足りないことがわかります。
R&AC 鴨下:全国に事業を展開されていたり、部門数が多い企業ですと、間違えて違う部門のシートを更新してしまうようなこともありますね。部門間のコミュニケーションについて、メリービズさんでお客様から聞く話はありますか。
メリービズ 長谷:間接部門と事業部門間で必要以上のコミュニケーションが発生し、事業部門の現場社員から不満の声が上がる、とよく聞きます。それに頭を抱えているのが経理や経営管理の部長です。経営層と現場の間で板挟みになることも多いですね。
ナレッジラボ 浅井:ここでは業務の統制を作っていくことや、テクノロジーを使って解決していくのが非常に重要な観点かと思います。
誰でも業務ができる
図2:誰でも業務ができる
R&AC 鴨下:2つ目の「誰でも業務ができる」という点は、聞こえ方によっては、魔法の言葉のような気もしますが、こちらについてはいかがでしょうか?
ナレッジラボ 浅井:よくある問題点は3つです。
1つ目は、事業部門の方が予実分析をするときに細かい数字を見ていきたいが、会計システムや財務データへのアクセス権限を持ち合わせていないことです。その都度、事業部門から経理へ「この取引の内訳教えてもらっても良いですか?」というコミュニケーションが発生し、経理が元帳から数値をひっぱり出さなければいけません。
しかし経理担当者は月次締めや月末業務があるので忙しく、結果として物事が進まず、会社からは経理がボトルネックとみなされてしまう現象がよく起こります。
2つ目に、ファイル管理の属人化です。担当者がいなくなると誰もファイルを管理できなくなる「サグラダファミリア状態」のExcelファイルがある、とよく聞きます。経営企画や経理の担当者が作ったファイルが結果的に大衆化されず、属人化してしまった事象です。
3つ目が、権限による業務の分割です。経営企画の担当者が人件費データを取りまとめて経営層に提出する際、事業部門側では人件費の細かい内訳を閲覧できないルールにしている会社が多いです。つまり、人件費を含むレポートは、経営企画の担当者以外は触れなくなってしまうケースです。
メリービズ 長谷:地方の介護、福祉関連サービスを手掛ける企業様では、社長のみが使用している「秘伝のExcel」があるそうです。Excelを見れば数字はわかるけれども、Excelへの入力業務が社長ご自身に属人化していて不安だということも仰っていました。
R&AC 鴨下:たとえば地方拠点の企業の中には経営企画部など企業の中長期での経営計画を策定・管理する様な部門がなく、財務や経理を横断して担当されている方も多くいらっしゃいます。経理業務のBPOやアウトソーシングをお願いできる先が身近になく、経理担当が長年同じ仕事をしていることもあります。こういう企業がDXやアウトソーシングに切り替えるきっかけにはどんなことがあるでしょうか。例えば担当者の退職、異動、社長の世代交代などでしょうか。
メリービズ 長谷:おっしゃる通り、退職は非常にわかりやすいきっかけです。あとは、担当者が実際に「DX後の景色」を見たことがあるかが大きいと思います。どうしても実際にDXをやってみたことがないとイメージが湧かず、共通言語になりにくいでしょう。弊社のお客様である中部地方の不動産企業では、経営層の方が東京のIT企業でDXが当たり前になっている景色を見た上で、地元に戻ってそれを波及させていらっしゃいました。
欲しい数字が見えて適切な判断に移すことができる
図3:欲しい数字が見え、適切な判断に移すことができる
R&AC 鴨下:3つ目のテーマで「欲しい数字が見えて適切な判断に移すことができる」についてはいかがでしょうか。
ナレッジラボ 浅井:会計データをシンプルに理解する、ということは意外と難しいです。会計データはいくつかの要素が複合されているので、図3の左側のとおり、会計データを立体的なブロックと捉えて、読み取っていただけるとわかりやすいと思います。
例えば、取引先A社で製品Bを売っていた時、取引としては1件ですが、取引データは複数の組み合わせで抜き出すことができます。部門と品目でかけ合わせれば、セグメントごとの成績がわかりますし、どの拠点のどの取引先の売上が多いのかもわかります。経営者が本来見たい数字が全て見えるはずなんです。
しかし、企業の経理体制やノウハウ不足により、数字が見えないこともあります。また、制度会計と管理会計で数字が違う、ということもありますね。例えば、事業部の方が月末に売上着地を2,500万円で報告したのに、月次決算が締まって月次レポートを見たら2,200万円になっている、といった具合です。
R&AC 鴨下:会計システムの善し悪しというより、どのように予実データを捉えるか、どこに保管しておくのか、が難しいですね。
メリービズ 長谷:現場の手が回らず、そういう課題感を持たれる企業様は多いのではないでしょうか。企業の成長とともに、事業部門と管理部門にギャップが出始めている時期だと推察しています。
R&AC 鴨下:ここで、4つ目のゴール「予実ギャップについて打ち手を考えられる」というテーマに移っていきます。
予実ギャップについて打ち手を考えられる
図4:予実ギャップについて打ち手を考えられる
ナレッジラボ 浅井:予実管理で最終的に重要なのは、今期の着地に対して何が不足していて、何を埋めないといけないかの分析ができることです。特に重要なのが財務とKPI、つまり財務・非財務のデータを一度に管理できているかどうかです。財務と非財務の数字が綿密に繋がった状態で数字ギャップを見て、予実管理のコミュニケーションを適切にするのがツボと言えるでしょう。
R&AC 鴨下:非財務の数字(KPI)には、商談数や受注率、そこにかけた営業リソースなど、いろいろ含まれますね。
ナレッジラボ 浅井:はい、そのため予実管理シートをExcelで作成するとなると、財務データ、非財務情報、販売管理システムからのデータ等を引っ張ってきてまとめるため、Excel熟練者でも膨大な時間のかかる作業になります。
R&AC 鴨下:それは、そもそも課題が人なのか、管理ツールなのか、どちらでしょうか。また数字の整合性はどう合わせるべきなのでしょうか。
図5:目的と実施を妨げる課題を認識することが重要!(1)
ナレッジラボ 浅井:まずは、会計データのマスタを整備すること、あるいは会計システムに入力するに至る業績管理のフローをきちんと定義しなおすことが必要です。抜本的に上流工程を変更することが難しければ、コンサルティングサービスを用いて、自社の状況を言語化するのも一手です。
その後の実行フェーズにおいても、多くの場合はリソースが足りないという課題に直面します。ですので、不足分はアウトソーシング等を活用しながら仕事を止めず、プロジェクトを前に進めていくのが肝要です。この二つが重要なアクションになります。
R&AC 鴨下:大手企業、中小・スタートアップ企業、IPOを目指される企業、どのフェーズでも当てはまるような内容ですよね。
図5:目的と実施を妨げる課題を認識することが重要!(2)
メリービズ 長谷:弊社で管理会計のアウトソーシングをサポートさせていただいた企業様では、当初、会計処理が複雑で可視化できておらず、アウトソーシングは無理じゃないかとお話をされている方がいました。
また、他の中小企業やスタートアップ企業で予実管理がうまくいかないと言われる際によく聞くのは「タスクが山のようにあり、なかなか手がつけられない」といったことです。
ただ、しっかり情報を揃えて業務を分解していくと、お客様でしかできない部分と、外部委託できる部分が明確に分かれていきます。上流設計をBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)で整備しながら、担当者のリソースに余白をつくることが大事ですね。
R&AC 鴨下:地方拠点の企業では特に、経理担当を採用できない、リソースがない、兼務をしていて忙しいという実態があります。この辺りはいかがでしょうか。
ナレッジラボ 浅井:属人化と業務フローがボトルネックになってくるでしょう。誰かに仕事が偏り、仕事が進まず、もっと仕事を楽にしようという視点が欠け落ちてしまいます。
例えば、本質的な業務改善の為に、請求書を発行してもらうタイミングをお客様と調整すれば良いものの実際には出来ていないという事がありますが、これは仕事を楽にする視点が欠け落ちた状態の最たる例です。選択肢を増やすという観点では、クラウドツールの導入と外部リソースの活用がポイントになるかなと思います。
理想の予実管理実現のための対策とは?
図7:理想の予実管理実現のための対策とは?
R&AC 鴨下:理想の予実管理を実現するために何をすべきか、解説をお願いできますか。
メリービズ 長谷:予実管理の課題に対する対策は、この表(図7)に照らし合わせて進めていただければと思います。
まず課題は、仕組みと人材の大きく2つにわかれます。仕組みの課題としては、現場の方が数値集計のために多くの情報源に当たらなければいけなかったり、手集計がメインであったり、必要な情報になかなかアクセスできていなかったり、といったことがあります。
これらの課題に対しては、BPRやシステム導入・利活用をおすすめしています。順番としては、まず社内プロジェクトで業務整理や見える化などのBPRを実施した後に、システム導入・利活用を進めるのが王道かと考えています。
人材の課題では、計上漏れ、入力ミス、手元のExcelと会計数字が合わない、退職で業務ストップになるといったことが挙げられます。
これらの解決でインパクトが大きいのは、人材の調達です。採用やアウトソーシングを検討しましょう。我々の『バーチャル経理アシスタント』はプロ経理人材を豊富にかかえているので、ご興味があればぜひお声がけください。また、システム導入の利活用の観点では、ツールの力を借りるのも一手になります。
仕組みと人材どちらに課題があるのか特定できない場合は、課題の見える化・特定をしてから対策を打つことをおすすめしています。特定した課題について、関係者の合意と納得を得るところまで進められれば、より効率良く進められるかと思います。
図8:仕組み化の課題を解消した事例 『Manageboard』
ナレッジラボ 浅井:仕組み化の課題解決ということで、弊社では『Manageboard(マネージボード)』という予実管理のクラウドサービスを提供しています。APIで会計システムと高速連携できますので、Excelをダウンロードしてきて貼り付ける作業なども一切なくなります。
「この人にはこの部門の情報を見せる・見せない」という柔軟な権限設定ができるのも特徴です。データを正しく素早く中継できるので、メンテナンスの効率化、経営判断に必要なデータの高速アウトプット、データ統制上のストレスをゼロにする効果などが期待できます。
図9:仕組み化の課題を解消した事例 『メリービズ経理DX』
メリービズ 長谷:人材にまつわる課題の対策としては、2つあります。1つ目は、計上漏れの原因となる繁忙期に、アウトソーシングをすること。もう1つは、Excelから会計ツールに移行するにあたって、業務平準化のためのBPRコンサルティングを実行することです。
弊社のコンサルティングサービスである『メリービズ経理DX』では、850社以上のアウトソーシング実績から抽出されたノウハウをもとに、業務設計を行っています。現状を見える化して課題を特定するまでの経営・現場間のコミュニケーション、関係者との合意形成を外部からご支援させていただきます。
自ら業務を行うよりもミスが減少しやすく、Excelと会計ツールが整合される上に、担当者に心理的余裕が生まれて、今までできなかった追加業務に着手できるというのが、大きな効果だと考えております。
図10:仕組み化の課題を解消した事例 『V-ONEクラウド』
R&AC 鴨下:最後に弊社ツール『V-ONEクラウド』での解決策です。債権管理では金額のばらつきや属人性が課題になってきます。入力不備や漏れ、二重管理もあるでしょう。アナログ業務を洗い出し、会計・販売システムと連携しやすいシステムを採用することを推奨しています。
予実における着地予測の最適解として、業務自体を平準化することだけでなく、どうしても迷う場合は第三者の意見も活用いただくのがよいと考えております。
さて、冒頭の問題提起に対し3社で議論してまいりましたが、いかがでしたでしょうか。
人で解決する部分なのか、フローとやり方で解決をしていくのか、はたまたツールを入れていくことで解決をしていくのか。ここをうまくバランスさせながら課題解決をされるのが良いかと思います。
また、該当分野でお困りの方はぜひ、お気軽にご連絡ください。本日はご参加いただき、ありがとうございました。
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