仕訳帳とは?総勘定元帳との違いと購入できる場所を紹介
2014年以降、すべての事業者について記帳義務が課されており、企業や個人事業主などのすべての事業者は、日々行われる取引を記録し帳簿を作成する必要があります。
また、仕訳帳をもとに貸借対照表・損益計算書などの重要な書類が作成されるため、仕訳は正確に行う必要があります。この記事では仕訳帳を中心に、仕訳の基礎知識や勘定科目、総勘定元帳の概要なども解説します。
目次
そもそも仕訳とは?
仕訳とは、企業や個人事業主などの事業の取引を記載する作業のことです。
複式簿記のルールでは、それぞれの勘定科目の分類ごとに、帳簿の「借方」と「貸方」に振り分けて記載します。これが仕訳の基本であり、正確に仕訳を行うためには勘定科目についての知識が必要です。
つまり、日々の仕訳の積み重ねが、企業や個人事業主の1年間にわたる経営の記録になるわけです。経理担当者にとって仕訳とは、最も基本的な業務であると同時に、最も重要な業務の1つだといえるでしょう。
勘定科目とは
仕訳の基準になる勘定科目は、以下のように大きく5つに分類されます。
- 資産(現金、預金、売掛金、未収金など)
- 負債(買掛金、未払金、借入金など)
- 純資産(資本金、資本準備金など)
- 収益(売上、受取手数料、受取利息など)
- 費用(仕入、給与、福利厚生費など)
このうち資産・負債・純資産は貸借対照表にまとめられ、収益と費用は損益計算書にまとめられます。また、資産・費用が増えた場合は借方に、負債・純資産・収益が増えた場合は貸方に記載します。反対に、資産・費用が減少した場合は貸方に、負債・純資産・収益が減少した場合は借方に記載しましょう。
たとえば、商品を販売して売上があったと仮定しましょう。その場合、勘定科目の「売上」は収益に分類されるので、金額が増加した場合は仕訳帳の貸方(右側)に金額と勘定科目を記載します。
日々の業務の中でこうした取引が発生するたびに、勘定科目を適用して仕訳帳に記載します。この作業をおろそかにすると、決算書や申告書を正確に作成できません。最終的に間違いのない財務諸表を作成するためには日々継続して仕訳を行うことが重要です。
仕訳帳とは
事業で行った取引を、日付順に漏れなく記載する台帳が仕訳帳です。記載する時には勘定科目と、その金額の増減によって借方と貸方のどちらに記載するのかが決まります。
勘定科目 | 借方(左側) | 貸方(右側) |
---|---|---|
資産 | 増加した場合 | 減少した場合 |
負債 | 減少した場合 | 増加した場合 |
純資産 | 減少した場合 | 増加した場合 |
収益 | 減少した場合 | 増加した場合 |
費用 | 増加した場合 | 減少した場合 |
一例を挙げると、資産勘定の現金が増加した場合は、左側の借方に記入します。その反対に現金が減少した場合は、右側の貸方に記入します。一方で負債の買掛金が増加した場合、今度は右側の貸方に記入し、減少した場合は左側の借方に記入するのです。
総勘定元帳や貸借対照表・損益計算書は仕訳帳にもとづいて作成します。つまり、最初の仕訳でミスをしてしまうと、その後に作成する重要な財務諸表まで正確さが失われてしまいます。複式簿記のルールに従って、適切な仕訳を行いましょう。
仕訳帳と総勘定元帳の違い
仕訳帳は日付を基準に、つまり時間軸に沿って取引を記載する帳簿ですが、それとは別に勘定科目を基準に取引をまとめた帳簿が総勘定元帳です。この日にどのような取引があったのかを確認する場合は仕訳帳を、この勘定科目ごとに金額の動きを確認する場合は、総勘定元帳を参照することになります。
仕訳帳の書き方を例題で簡単に解説
仕訳帳に記載する項目は、「日付」「勘定科目」「金額」「摘要」の4つです。このうち勘定科目と金額は借方と貸方の両方に記載します。摘要とは、取引の内容を簡単に記載する項目です。
実際に取引が発生した場合、以下のような3つのステップで仕訳帳に記載します。
- 取引内容に該当する勘定科目を決める。
- 勘定科目が5つのグループのどこに分類されるか確認する。
- 勘定科目と金額を借方と貸方に記載する。
では、仮の取引を定義して、具体的な仕訳帳の書き方をシミュレーションしてみましょう。
【例題①】
・7月7日に取引先から精密機器の代金として、銀行口座に売掛代金50万円が入金された。
上記の仕訳作業をステップごとに作業を進めてみましょう。
この取引に該当する勘定科目は「売掛金」と「普通預金(現預金)」です。勘定科目はどちらも「資産」です。簿記のルールに従い増加した資産は「借方」に、減少した資産は「貸方」に記載します。
最終的な仕訳帳への記載は以下のようになります。
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|---|
7/7 | 普通預金 | 500,000 | 売掛金 | 500,000 | 精密機器 |
【例題②】
・8月8日に取引先から掛で購入していた通信機器の代金30万円を、小切手で支払った。
上記の仕訳作業をステップごとに進めてみましょう。この場合は勘定科目が負債と資産の2つあることに注意してください。
- この取引に該当する勘定科目は「未払金」と「当座預金」です。
- 勘定科目は「未払金」が「負債」で、「当座預金」は「資産」です。
- 仕訳帳のルールに従い、減少した負債は「借方」に、減少した資産は「貸方」に記載します。
小切手を振り出した時は「当座預金」勘定で仕訳を行うため、仕訳帳への記載は以下のようになります。
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|---|
8/8 | 未払金 | 300,000 | 当座預金 | 300,000 | 通信機器 |
帳簿づけの流れを簡単に解説
仕訳帳と総勘定元帳の記載内容は同一でなければなりません。そのため帳簿づけの流れとして、仕訳帳に記載した内容を、今度は総勘定元帳に転記する必要があります。
仕訳帳に記載した項目は、すべて総勘定元帳に転記しますが、それ以外にも総勘定元帳には「伝票番号」「相手科目」「残高」を追加して記載します。
相手科目とは、仕訳帳の勘定科目で反対側のポジションに記載した内容のことです。たとえば現金での売上が発生した場合には、総勘定元帳の「売上」の勘定(ページ)に、相手科目として「現金」を記載するのです。
もう1つの残高ですが、これはある期間の取引をまとめた後で、現金や売掛金がどれくらい残っているのか、その金額を記載する項目です。
仕訳帳から総勘定元帳、さらに補助簿などへの転記を効率的に行うためには、エクセルで帳簿を作成して計算機能を利用するか、会計ソフトを利用することが現在では一般的です。
仕訳帳を購入できる場所
紙に記載するタイプの仕訳帳は、各メーカーからさまざまな商品が販売されています。使いやすいものを、書店や文具店、またはECサイトで購入するとよいでしょう。100円均一ショップでも購入できます。
紙タイプの仕訳帳には、カバーつきのブック版と、1枚ずつ使えるルーズリーフ版とがあります。エクセルで作成する場合は、テンプレートをダウンロードして使えば手間がかかりません。
まとめ:着実な仕訳の積み重ねが正確な決算書を作り出す
正しい仕訳帳を作成するためには、日々の取引データを適切に記録する必要があります。その最も基本的な作業が仕訳です。最後に、正しく仕訳を行うために重要な3つのポイントをまとめておきましょう。
- 仕訳帳への記載をまとめて行うことはミスにつながり、決算書にも影響を与えます。仕訳は取引が発生した時点で、順番に毎日行うことが重要です。
- 仕訳帳にミスなく記載するために、勘定科目の分類を正確に把握することと、5つのグループごとに増減を借方・貸方のどちらに記載するべきか抑えておきましょう。
- 仕訳帳から総勘定元帳などへの転記作業では、扱う取引の数が多いとミスが起こりやすくなります。ミスを減らして業務効率をアップするためには、会計システムの導入を検討するべきでしょう。
ビジネスは生き物に例えられることがありますが、仕訳とはその毎日の成長記録のようなものです。会計業務全般に関わる重要な作業なので、仕訳帳の書き方などをよく理解して、日々スキルアップを目指すことをおすすめします。